<Liver trial>












「お母さん、お父さん今年の七夕晴れかな?」
私が未だ5歳の時両親の仲は凄く良かった。
良く一緒に出掛けたし、一緒に旅行にも行った。
お母さんの作る料理は美味しくてお父さんは優しく頭を撫でてくれた。
お母さんは私の髪を綺麗に結ってくれてそれを見たお父さんが髪型を褒めてくれた。
そんな何気ない日常が幸せだった。
そんな毎日がずっと続くと思ってたから。














「あなたは何時も自分勝手よッ!」
「お前は家にいるんだから良いだろう!!」
何時の間にかそんな笑顔の絶えない家族の姿は消えた。
2人が顔を合わせれば口喧嘩は絶えないし、どんどん冷めて行くだけだった。
両親のそんな姿を見てるのは辛かった。
もう何処にも幸せの形はなかった。
私の家には何処にも…。














「お母さん」
何度お母さんを呼んだか。
「お父さん」
何度もお父さんを呼んだ。
やっとの思いで両親は私のお願いを聞いてくれた。
"7月7日の七夕だけは前みたいに一緒に星をみよう"
それだけ。
笹を飾って、短冊を書いて、飾りを付けて…。
周りの皆がやってる様に七夕を過ごしたかった。


















私の誕生日は両親とも別々にお祝いしてくれた。
別々にケーキもプレゼントもくれた。
別々に両親は私に愛情をくれた。
















7月5日の日。
お父さんが笹を買って来てくれた。
私はそれを喜んだ。
そして直ぐに折り紙を折って飾りを作った。
輪っかを作って繋げて短冊を作った。
短冊はお母さんにもお父さんにもあげた。
お母さんが何て書いたか…お父さんが何て書いたか私は知らない。
きっと2人とも短冊にお願い事なんて書かなかった。
お願い事をしてそれに頼ってたのは幼い私だけ。

















7月7日の夜になってもお父さんは帰って来なかった。
何となくそんな気もしていた。
諦めずにお父さんを待って一緒に星を眺めたかった。
そんな小さなお願い事も叶わなかった。
「早く寝なさい」
お母さんは少し期待してた。
お父さんが帰って来る事。
だから凄く寂しそうな顔をして笑ってた。
それから自分の部屋で寝ていると1階から凄い音がした。
何の音か気になって下に降りて見るとお母さんがリビングに立ってた。
「如何したの?」
そう言ってた。
リビングに置いてあった笹は何時の間にかなくなってた。
そこで私は最後の大きなお願い事を書いた短冊を飾るのを忘れた事を思い出した。













何処かに置いて飾り忘れた。
そう考えていたらお母さんが私を見下ろしてた。
お母さんを見上げるとお母さんは泣きながら何度も何度も謝ってた。
私は苦しくて何度もお母さんを叩いた。
苦しくて声も出なくて、涙を流してお母さんを呼んだ。
お母さんの最後の思い出はお母さんの泣き顔と何度も謝る声だけ。
















気付いた時には私はもうこの姿でリビングから動けなかった。
だから、お母さんがダイニングに居る事もお父さんが書斎に居る事も知っていたけど会いにも行けなかった。
















きっと此れが私のお願い事。
叶わなかったお願い事。
短冊に書いたお願い事…。
家族の距離は死んでも縮まらなかった…。


























「栞ちゃん?」
黙り込んだ儘俯いて話さなくなってしまった栞に声を掛ける
その栞の顔は悲しげだった。
「で、探し物ってのは何だ」
面倒臭そうに跡部は話を促した。
栞の探し物を探すにも探して欲しい物が解らなければ手も足も出ない。
「父親と母親ですか?」
鳳がリビングから出られないと言う話を聞き尋ねたがそれも首を横に振って否定した。
「父親と母親よりも大事な物なのかよ」
信じられないとでも言いたそうな宍戸を少しだけ見て栞は頷いた。
「大きいもん?ちっさいもん?」
大きさによって部屋を当てようとでも言うのか…忍足は不愛想な顔で聞いた。
−…短冊−
「短冊って七夕の願い事書く紙?」
もう一度が尋ねると頷いた。
−如何しても必要なの−
泣き出しそうに眉を顰めた。
小さな少女の書いた短冊を探す…。
コレが探し物。
















「…くだらねぇやってられるかッ」
「俺もパス」
「せやな」
「ちょっ…先輩」
やはりそんな物と言って跡部達は席を立った。
「短冊に何か書いたの?」
−思い出せないの…如何しても。思い出そうとすると頭が痛くなるの−
どんなに思い出そうとしても記憶がない。
何かが邪魔をする。


















「探そう」
帰ろうとしてる跡部達の耳にの声が届いた。
「何言っとるん?
信じられなくて全員が固まっていた。
「良いよ栞ちゃんと2人で探すから帰っても」
自分の懐中電灯の明かりを点けては席を立つ。
栞の手を引いてリビングを出ようとする。
…帰るぞ」
跡部がの手を掴みリビングを出ようとするのを止める。
は栞に憑かれている。
此の儘ではずっと栞に憑かれている事になるし他の霊も見える。
「栞ちゃんずっと待ってたのよ…短冊がないと栞ちゃんはずっと此の儘」
だから自分が探すのを手伝うのだとは跡部から手を振り解いた。
お姉ちゃん………ありがとう−
きっとが跡部達と一緒に家に帰っても栞はから離れただろうが此の儘には出来ない。
そうは思ったのだ。
「僕も付き合いますよ」
「…しゃぁないわ」
「しかたねぇ」
「…ッチ」

















−ありがとう−


























あー…進まない進まない。
書いても書いても納得行かない。
書いても書いてもタグ打ちが…(泣
誰か助けて…。
栞の台詞のタグが嫌!!
でも栞好きなの。
もう少し…ではなさそうです。
これから短冊探しに向かいます故。
自分の首を絞める作品を作り続けてますわ(号泣
2005/07/18